関節リウマチの治療
薬物治療
従来型合成抗リウマチ薬:csDMARDs
関節リウマチを引き起こしている免疫の異常に作用して病気の活動性を抑えます。代表的な薬剤としてメトトレキサート(商品名:リウマトレックス)があります。日本だけでなく、海外でも関節リウマチと診断したら まず最初に考慮される内服薬 です。
メトトレキサートが使用できるようになって、関節リウマチの治療成績は良くなりましたが、それでもcsDMARDsのみで寛解を達成できる患者さまは4割に満たない現状です。その場合には次に述べる生物学的製剤(bDMARDs)やJAK阻害薬(tsDMARD)の併用が推奨されています。
そのほかに使用されるcsDMARDs
- サラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジン)
- レフルノミド(商品名:アラバ)
- ブシラミン(商品名:リマチル)
- イグラチモド(商品名:ケアラム)
- タクロリムス(商品名:プログラフ) など
生物学的抗リウマチ薬(生物学的製剤):bDMARDs
日本では2003年から使用できるようになった薬剤です。バイオテクノロジーを駆使して開発された製剤で、関節の炎症に関係する物質(サイトカイン)などに直接働きかけて炎症を制御します。
一般的にはメトトレキサートで関節炎が改善しない場合に追加で使用されます。csDMARDsと比較して、 関節炎改善・関節破壊の抑制においてより強力な効果が期待できます。
一方で大変高額な薬剤で、健康保険が適応されても、月額1万5000円~30000円ほどこの薬剤だけのためにかかってしまいます。
こちらはすべて点滴もしくは注射の製剤になります。
現在使用可能な生物学的製剤は9種類あります。
分子標的合成抗リウマチ薬(JAK阻害薬):tsDMARDs
こちらは2016年から使用できるようになった最新の薬剤です。細胞の内側にあるヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素の働きを抑えることによって、生物学的製剤のように炎症の原因となる物質(サイトカイン)の影響を抑える薬剤です。
内服薬でありながら、生物学的製剤と同等の有効性が期待されています。また生物学的製剤を使用しても関節炎が持続している患者さまに対しての有効性も報告されています。
内服薬ではありますが、生物学的製剤と同様に高額な薬剤です。
現在使用可能なJAK阻害薬は5種類あります。
- トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ )
- バリシチニブ(商品名:オルミエント)
- ペフィシチニブ(商品名:スマイラフ)
- ウパタシチニブ(商品名:リンヴォック)
- フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)
メトトレキサートや生物学的製剤、JAK阻害薬などの抗リウマチ薬には、免疫力を落としてしまう副作用があります。そのため、使用前には感染症のスクリーニング検査が必要ですし、使用中には注意しなければいけないことがたくさんあります。詳しくは、「リウマチの治療を受ける方へ ~リスクマネージメント~」をお読みください。
多くの薬剤が使用できるようになり、治療の選択肢も増えてきています。治療方針の決定については、患者さま一人ひとりに対して、どの薬剤が最適かどうか、よく話し合って、十分ご納得いただいたうえで行わせていただきます。
生物学的製剤やJAK阻害薬などの薬剤は費用面で、すべての患者さまが使えるというわけにはいかないこともございますが、「高額療養費制度」などが利用できることもありますので、お気軽に主治医にご相談ください。
抗リウマチ薬以外の薬剤
①副腎皮質ステロイド(プレドニン・プレドニゾロンなど)
ステロイドを使用すると、関節の腫れや痛みは軽減し、リウマチが良くなっている様に自覚されます。しかしステロイドには副作用が多く、「諸刃の剣」でもあります。
ステロイドは、発症早期のリウマチの関節炎に対しては有効性が示されており、治療開始時に抗リウマチ薬と同時に使用することは推奨されております。しかし、発症して時間が経過してしまった関節炎に対しては、痛みを軽減する効果はありますが、関節破壊・変形を予防する効果はありません。したがって、関節リウマチに対してのステロイドは、発症早期の関節炎に対して、少量かつ短期間の使用に留めておくことが好ましいと考えています。
②消炎鎮痛剤(ロキソニン・ボルタレンなど)
いわゆる痛み止めですが、こちらも関節炎を抑える効果はなく、関節破壊・変形を予防する効果はありません。リウマチによる関節炎で痛み止めを飲まなければいられない状態であれば、むしろ抗リウマチ薬による治療の強化が必要と考えます。消炎鎮痛薬には、胃・十二指腸潰瘍や腎障害などの副作用もありますので、内服するなら頓服薬として使用することをオススメしています。
薬物以外の治療
手術療法(滑膜切除術・人工関節置換術・関節固定術)
関節リウマチに対する薬物療法は、関節炎を抑えて関節が変形しないためための治療ですが、手術療法は、主に関節破壊が進行してしまった関節の再建を目的に実施されます。最近は治療薬の進歩により、国内の手術件数は減少傾向にあります。
手術が必要と判断した場合には、適切な手術を受けられる整形外科を紹介いたします。